More Than A Happy Memory

Original Story  → 
written by pottergirl786
translated by blue
「みんな、よく出来てるよ!」
ハリーの言葉に、「失神呪文」を練習していたDAメンバーはその手を止めた。
ハリーの話を聞こうと部屋の中は静かになった。
「次回は「パトローナス」の練習を始めようと思うんだ」
この発表に興奮した様子で語り合うメンバー達は2・3人づつ組になってドアをくぐり、それぞれの寮へと戻って行った。
ハリーも、自分のパトローナスがどんな形をしているかという話しで盛り上がるロンやネビル、ディーンの後ろについて行った。
だがふと見ると、ハーマイオニーが床に散らばった大きなクッションに座り込んでいるのに気がついた。
本に顔を突っ込みまったく帰る様子がない。

「帰らないの?」

肩越しに声をかけた。
ハーマイオニーは分厚い革表紙の本からちらりと視線を上げたが、心ここにあらずといった感じでハリーに手を振っただけだった。
ハリーがドアの前で急に立ち止まったせいでフレッドとジョージにぶつかってしまった。ロン、ネビル、ディーンは話しに夢中で立ち止まりもしなかった。

「ごめん」

ハリーは双子をやり過ごすとハーマイオニーの方へ歩いていった。



彼女が読んでいる本には、「12段階式やさしいパトローナスの作り方」と書いてある。

「次のDAでは一番先に出来るようになりたいの」

本から目をそらさずにハーマイオニーはそう言った。
時計を見ると門限までまだ20分ある。ハリーはまだ大丈夫だと思い彼女の隣に腰を降ろした。

「待ったなくていいのよ」

しばらくしてハーマイオニーはそう言った。今度は本を降ろし顔を上げた。
ハーマイオニーの膝の上に置かれた本に視線を落とすと、彼女が読んでいたページが見えた。


《ステップ6:幸せなことを考えよう!》


タイトルの下には笑い顔のイラストがいくつも並んで描いてあった。
それに続いて「幸福なことを思い浮かべる」にはどうすればよいかと、「幸福な思い出の例」が挙げてあった。
それ以上読まなくとも、ハリーにはそこに書かれていることの無意味さがよくわかった。
ハーマイオニーの手からその本を奪った。

「こんなくだらない本を書いたのはいったい誰なんだ?」

この言葉にハーマイオニーはいたくプライドを傷つけられたらしい。

「私はいつも最後まで読んでから価値があるかどうか判断するの」

ハリーが本をめくって最後の著者紹介を探しているのがわかって、身構えた。



〜〜〜〜ガレン・グランドストーン〜〜〜〜
16冊のノンフィクションを著作。代表作は「調和的幸福論:ポジティブ・シンキングの技術〜どんな時もどんと構えて〜」、120週に渡って日刊予言者新聞のベストセラー第一位を続けた名作「手洗いから笑いを」などがある。著者は現在も妻のジョイ、それに二人の子供、グラディスとメリー、ペットのジェスターと共にロンドンに住んでいる。



ハリーは著者紹介を読むと、信じられないとでも言うように首を振りながら立ち上がり、壁に並んでいる本棚の一つへそれを戻した。

「まだ読んでるのよ!」

ハーマイオニーも立ち上がった。

「何かヒントがあったはずよ!」

「ハーマイオニー、僕を信じてくれる?」

ハリーは静かに首を左右に振った。

「あの本は何の役にも立たないよ」




ハーマイオニーはしかめっ面でハリーを睨むと、しばらくして口を開いた。

「パトローナスを作り出すには「幸せなことを考える」というのが一番大切なポイントだと思うの」

「その通り」

ハリーは答えた。

「だけど、もっと複雑なんだよ」

それから一番判りやすく説明するにはどう言えばいいかを黙って考えた。
ハーマイオニーは期待に満ちた目で彼を見つめていたが、待ちきれずにハリーに近寄る。

「もっと複雑ってどういうこと?」

ハリーがずっと黙ったままなので彼女の方から質問した。

「例えば〜・・」

ハリーはルーピン先生が言ったことを思い出そうと一生懸命だった。

「まず最初に、何か一つ、幸せな思い出に集中しなくちゃいけないんだ。だけど昔の思い出じゃだめなんだ。。。。。他のものでもいいんだ・・・」

ハリーはまた黙って2年前ルーピン先生から教わった時のことを思い出した。

「「幸せな思い出」だけじゃなくて、「希望」とか・・・その・・・「欲望」とか。。その感情が強ければパトローナスも強いものになる。」

「欲望」という言葉に、ハーマイオニーはハリーから視線をそらせて床を見つめた。





「聞いてもいいかしら?」

何度か躊躇った後、ハーマイオニーは切り出した。


「もちろんだよ。何?」

「あなたは今までに素晴らしいパトローナスを作り出したでしょう?」

ハーマイオニーはまだ顔を床に向けたままだった。

「シリウスを救うために・・・」

「みんなを助けるためだよ」

小さな声だったが彼女の言葉を否定するように顔を振った。
湖のほとりで意識なく倒れているシリウスとハーマイオニーに何百ものディメンターが群がり来る光景は、最悪の記憶だった。



「それに・・・あれはまぐれさ」

ハリーはそう付け加えた。

「タイムターナーが無かったら・・・」

ハーマイオニーは顔を横に振って微笑んだ。

「まぐれなんかじゃないわ、ハリー。自分でもわかってるでしょ?去年の夏、あなたの従兄を救った時もまぐれなんかじゃなかったわ?」

その言葉にリトル・ウインジングの路地が浮かんできた。道にうずくまるダドリー。ディメンターの凍えるような指が首に巻き付いた時に襲われた虚無感。

それからもう一度親友の顔が浮かんできて、エネルギーが満ちあふれ、2匹のディメンターを追い払うことが出来たのだ。



まるで彼の考えが分かっているようなタイミングでハーマイオニーの声がしてハリーは我に返った。


「ハリー・・・何を考えていたの?ディメンターを追い払ったこと?・・・私にも話してくれる?」


ハリーは黙ったままだった。
どうして言いたくないんだろう・・・彼女の顔を思い浮かべたと・・・そしてロンの顔を・・・まだ記憶に生々しいあの恐ろしい夜に彼に力を与えてくれたことを・・・




ハリーが観念して口を開こうとした、それより先にハーマイオニーが話し出した。

「いいのよ、ハリー。。。私に話す必要なんてないんですもの。」

そう言って優しく微笑むと腕時計をもう一度チェックした。

「戻ったほうがいいわ。面倒なことになるし。。。」

だが2人はどちらもドアへ向かおうとはしなかった。


ハリーももう一度時計を見た。9時までに寮へ戻るにはあと5分しか残されていない。
走れば間に合うが、もうぎりぎりである。





窓を見やりながら、ハリーは自分でも驚くようなことを口にしていた。

「それじゃ、もう少しここにいる?パトローナスの練習に付き合ってもいいよ。。。君がそうしてほしければ・・・」

ハリーの言葉にハーマイオニーはどちらにすべきか悩んでいるようだった。それからじっとハリーを見つめた。


「寮へ戻る抜け道を探さなくちゃね」


注意すべきは管理人のフィルチかピーブスだけだったのだが、今やアンブリッジという恐るべき存在がいる。

それでも、彼女が遠まわしに答えた意味に気がついてハリーの顔はほころんだ。



彼女もここにいたいんだ!



本当のところ、彼もそう思っていたから。
これだけのことで、どうしてこんなに嬉しく思うのか自分でも不思議に思えた。



ハリーは考えた。


捕まらずに寮へ戻るには?


普段ならこのことはそう重要な問題ではないの。だが、忍びの地図を寮に置いてきてしまった。


あれさえあれば・・・


「そうだ!」

ハーマイオニーにというより自分自身につぶやいた。

「いつもの手でいけるよ!」

ハリーは窓まで歩いてゆき、窓ガラスをバタンと開くと杖を構えて叫んだ。

「アクシオ 透明マント!」

しばらくすると、待ち構えたハリーの手の中に銀色に輝く透明マントが窓から滑り込んできた。

「へぇ〜。この便利な呪文は一体誰に教わったのかしら?」

ハーマイオニーはからかうように彼を見た。
その茶目っ気たっぷりな声に驚いてつい言い返した。

「たった今規則をやぶろうとしている誰かみたいな人だよ。」

ハーマイオニーはわずかに顔を赤らめ呟いた。

「私が規則を破るのはあなたに関係あるときだけだわ・・・」

ハリーの訝しげな視線に、

「特別な場合は仕方ないわよね。あの時はそうするしかなかったから。。。」

と急いで付け加えた。



体長15メートルもあるハンガリアン・ホーンテイルを倒したのに、ほんのわずかな切り傷だけすんだのは本当にそのおかげだとハリーは改めて感謝した。


今度は彼がお返しする番だ。












部屋の中央にハーマイオニーと並んで立つ。

「準備はいい?」

彼女は熱っぽく肯いた。
そんな彼女の姿に思わずハリーの笑みが零れた。
そして、練習を開始した。









**** **** **** **** **** **** 


「エクスペクト パトローナム!」

ハーマイオニーが叫ぶと、かなり遅れて銀色のもやが杖先から現れ何とか形になり始めた。
小さくて滑らかな動物の姿に見えたが、2・3秒で消えてしまった。

「上出来!さっきよりずっといいよ!」

ハリーは深紅のシルクのクッションに座り込んだ。

「少し休もうよ?」

ほとんど休み無しで続けていたので、ハーマイオニーも一息ついたほうがいい。


壁の明かりを消し、冷気が入るよう窓を大きく開け放ち、ディメンターの出現を再現してみようとしたが、実際に迫り来るディメンターの恐怖がなければ、パトローナスを作り出すにはかなりの努力が必要だった。

ハリーにさえ閉心術よりも難しいと思えた。

だがこの二つは似通っている。
一方は外部からの侵入を閉め出す作業。もう一方はマイナスの思考を押さえ込むためにプラスの思考を呼び起こす。どちらもたいへんな集中力と意志の強さを必要としている。

少し前からハーマイオニーが段々疲れてきているのは分かっていたが、ハーマイオニーの気持ちがよくわかるだけに無理に止めさせるわけにもいかなかった。

未だにハーマイオニーは腰を降ろすつもりは無いようだ。

「大丈夫だから。。。続けたいの。」

ハーマイオニーはきっぱりとそう言った。


ハリーは腰をおろしたまま、言葉を選びながら言った。

「とにかく、休憩すれば気分も変わるよ。それに、次のDAまでには上手く出来るようになるよ。今夜この場で完璧に出来なくたっていいだろ?」

だが、ハーマイオニーにとって「完璧に出来なくてもいい」ということは、太陽に「東から上らなくてもいい」と言うことと同じなのだ。

「いいの・・・まだ続けたいの。」

ハーマイオニーはそう言うばかりだった。
ハリーは肩をすくめると立ち上がって再び彼女の隣に立ち杖を構えた。

「僕が一緒にパトローナスを出せば、何か影響があるかもしれない」

ルーピン先生とはこんな練習をしたことはなかったが、別に問題はないだろうと思った。

「3つ数えてからだよ。いい?」

ハーマイオニーはこくりと肯いた。

「1、2、3・・・エクスペクト・パトローナム!」

ハリーの声だけが響き渡った。銀色の牡鹿が杖先から飛び出し部屋をぐるりと一周駆けると消えていった。

この光景にハーマイオニーはあんぐりと口を開いていた。杖はまだ構えたままだったが、呪文を唱えなかったのだ。
ハリーはもの問いたげに彼女のほうに振り向いた。

「どうして一緒にやらなかったの?」

ハーマイオニーは牡鹿の姿が消えた向こうの壁に目をこらしたまま首を振った。

「もう一度やってみる?」

ハリーはためらいながら尋ねた。


多分もう疲れたんだろう・・・強気な態度を見せたかったんだろう・・・


がしかし、ハーマイオニーは一言も言わずもう一度肯いた。
それじゃ、さっきは幸せな思い出に集中する時間が足りなかったかなと思った。

実際にディメンター襲われたら冷たく惨めな気分にうち勝ちつための時間はほとんどないのだが。。。

ルーピン先生はまず一つの思い出を決めておいて、その上級魔法を練習させた。


ハーマイオニーはどんな思い出を使っているんだろう?


ハリーにはそれがどんな記憶であろうともそれほど強くはないに違いないと思った。
そしていいことを思いつき、ハーマイオニーに目を閉じるようにいった。
目を見開き少し疑わしそうなハーマイオニーは、聞き間違えたんじゃないかと思っているようだ。

その表情を愉快に感じつつ、少し間をおいて尋ねた。

「僕の言うことを信じる?」

すぐに彼女の目の色が変わった。聞くまでもないと言いたげだった。

「それじゃ、いいかい?」

「先ず、僕の言ったとおり目を閉じて。」

ハーマイオニーはまだ何か言いたそうだったが、言われたとおりに目を閉じた。



一瞬、ハリーは目の前のハーマイオニーの姿にはっとした。



その目は閉じられ、唇は心なしか期待するかのように上を向いている。



だが不安げな表情から、彼が何をしようとしているか当惑していることがわかる。


目の前にたたずむ少女の寛容な姿は完璧にハリーを打ちのめした。





一瞬・・・もし彼女にキスしたら・・・彼女はnoと言わないかも・・・という考えがよぎった。頭がどうかしたんだと思った。





そんな不埒な考えを押しのけて、ハリーはハーマイオニーの後ろへ回った。
ハリーが肩に手を掛けると、ハーマイオニーの身体はびくっとしたが、その場から動かなかった。

「まず、昔の思い出は忘れるんだ。どんなに楽しい思い出だったとしても・・・。分かった?」

ハリーが耳元でささやくと、ハーマイオニーは声のする方へ首を傾け、うなずいた。

「よし」

彼女の頬がふれあうくらい近くにあることを無視しようとした。
だが理性より身体は正直で無意識のうちに彼女に身体を寄せていた。
ハーマイオニーのローブがハリーの胸を軽くかすめた。右手は杖を持ったまま彼女の肩から腕を滑らせた。

「今まで感じた一番幸せな気持ちを思い出すんだ。一番わくわくしたことを・・・」

こんどは「欲望」という言葉は使わなかった。ハーマイオニーはそういうことを感じたことが無いかもしれないから・・・多分きっと。

そしてハリーこそが感じているから・・・以前同じように二人きりで練習した時には決してそんなことこれっぽっちも考えたりしなかったのに・・・・

「その気持ちを千倍ぐらいに膨らませるんだ」

ハリーは低い声で続けた。

「重要なことは、その気持ちを持ち続けること。いつまでもその気持ちを持続すること・・・」

ハリーはさらに腕を伸ばし彼女の暖かな手に自分の手を重ねた。



杖腕と杖腕



重ねられた手に、お互いの杖が軽く触れあい音を立てる。その不ぞろいな音が静まりかえった空気を揺らす音楽のように響く。
ハリーは杖とハーマイオニーの手を一緒に自分の手の中に包み込むと、床と平行になるまで二人の腕を引き揚げた。

反対の手はハーマイオニーの腰に回していた。これはずっと後までハリー自身も気づいていなかった。。。。



頬が触れあうほどの距離。近すぎて彼女の表情が見えない。
ハリーの注意はハーマイオニーの呼吸とわずかに見える彼女の横顔に向けられていた
もちろん、呪文が唱えられるのを待って前方を指している伸ばされた腕にも。



今度はカウントしなかった。
ハリーは自分の準備出来た時にハーマイオニーも準備が出来たことを感じとった。


「エクスペクト・パトローナム!」


呪文とともにまばゆい光が炸裂し、ハリーはハーマイオニーが目を開いたのがわかった。


触れ合った杖先から2体のパトローナスが完全な形で噴き出てきた。
ハリーのパトローナス、牡鹿は今まで見たよりもずっと鮮明に光り輝いて、誇らしげな様子でまっすぐ彼らの前へ歩み出て、頭を高く持ち上げる様は王者の風格だった。
そして彼らの2・3歩手前で後ろから来るものを待つかのように立ち止まった。
そこにはハーマイオニーのパトローナス、銀色に輝くカワウソがまとわりつくように牡鹿の後ろからやってきた。滑らかな姿の小さなカワウソは牡鹿の後ろで飛び跳ねていた。
それからカワウソはふざけるように牡鹿の首や足の周りをぐるぐる回って部屋の反対側まで駆けていった。


ハリーはハーマイオニーが大きく息をのむのが聞こえた。


ハリーの牡鹿はカワウソを追いかけ、またもやカワウソがすばやい動きで牡鹿をからかうように別の方向へ飛び跳ねた。
銀色の物体は、互いに気まぐれな恋人の気を引こうとしているようかのようにじゃれあいながら、開け放った窓へと向かった。

そこから夜空へ舞い出たパトローナスは、月明かりと冷たい風で、輪郭がぼやけてきた。

ハーマイオニーが、ウエストに回されたハリーの手をするりとかわし窓際へ急いだ時、初めてハリーは自分の手がどこにあったか気がついた。
そのことに戦きながらもハリーは彼女を追いかけ横に並んだ。

窓際に並び牡鹿とカワウソが広い夜空を漂っているのをながめた。

2つの銀色の塊は、高い雲の中へ消えてゆく前にひとつに解け合った。
そしてまたたく間に彼らは消え去り、夜空には星だけが輝いていた。









**** **** **** **** **** **** 



その夜ハーマイオニーと二人、透明マントにくるまり寮まで戻る道のりは、ハリーにとって穏やかではなかった。

パトローナスが消えてすぐ部屋を出たので、彼らが見たことについて何も話をしていなかった。
ハリーはどんなに素直に考えても、今夜の出来事に全く説明がつけられなかった。
いろいろ理論的解釈を考えたが、どれもしっくりこなかった。


パトローナスは魔法で生み出されたもので、だから2人の人間が直面する危機に対して協力するかのように、2体のパトローナスが同じゴールを目指して協力することは筋が通っている。

・・・今夜追い払うべきディメンターは存在しなかった・・・ということは考えないことにした。

そして・・・彼の牡鹿とハーマイオニーのカワウソの間にはコミュニケーションがあった。。。


これは2体のパトローナスにとって当たり前のことなのだろうか?


一度に複数のパトローナスを見たことがないので想像もつかない。

ただ、彼らがお互いに部屋の中を追いかけ、じゃれあう姿はとても親密で、例えそれがパトローナスにとってごく普通のことだったとしても、そのイメージをハリーの頭から追い払うのは難しそうだった。

ハーマイオニーがどう思っているのか気になったが、部屋を出てからの彼女は驚くほど平然としている。ちらちら様子を伺いながらハーマイオニーが何を考えているのか探ろうとした。





太った婦人の前で合言葉を言うと、太った婦人はぶつぶつ言いながら彼らを通した。

やっと安全な場所に辿り着いたというのに、ハリーは透明マントを脱ぎたいとは思えなかった。






とにかく急いでお休みを言って男子寮への階段を駆け上がろうとした時、ハーマイオニーが突然腕をつかんだのでハリーは飛び上がって驚いた。
彼女の顔を見ると、その笑顔にさらに胸がどきどきした。

「今日はどうもありがとう」

ささやき声よりほんの少し大きいぐらいの声だった。

「一緒にパトローナスの練習をしてくれて・・・」


「必要の部屋」を出た時からずっと抱いていたハリーの中の気まずい思いがいっぺんに消えていった。



ハーマイオニーの役に立ったんだ!



彼女はやった-----とても強力で完璧なパトローナスを作り出した。



急に彼の胸は誇らしさで一杯になった。



ハーマイオニーは微笑を浮かべたままハリーに近づくと頬にそっとキスをした。

一瞬、彼の手はさっきのように彼女のウエストを掴んだが、ほんの一瞬だけだった。

「それじゃ、また明日ね」

そう告げる彼女の顔にはますます笑みが広がっていて、悪戯好きなカワウソがその瞳にちらりと見えた。






明日の朝には普段どおりだ。
数週間後のOWLにそなえて勉強も大変になる。スネイプの閉心術のレッスンも厳しくなるだろう。
だからこの次必要の部屋でパトローナスの練習が出来るのは、きっと10人以上のDAメンバーが一緒の時だ。


ほんの短い時間だったが、ハリーは親友と今夜過ごした時間を嬉しく思った。

とても驚くべき体験を彼女と分かち合えたことを嬉しく思った。

きっとほかの誰とも同じ体験をすることは出来ないに違いない。



ハリーは満足だった。









ハーマイオニーの姿が女子寮の入り口に消えるのを見送って、ふと思いつき一番近くの窓の外を眺めてみた。


空はさっき見たときよりもっと澄んでいた。
何千もの星が静かにまたたいていたが、一時間前に雲が覆っていたあたりは一際明るく輝いていた。

星空の向こう、どこかずっと遠くの地平線のかなたに、まだ空を明るく照らし続ける何かがいると確かに分かった。

---恐れを知らぬ牡鹿と聡明なカワウソ---

かすんだ水平線の中で一旦はぐれてしまったが、またお互いに相手を見つけることが出来たのだと・・・・・ハリーはその2体の輝く姿が確かに見えたと確信した。





end








つたない和訳にお付き合い頂いてありがとうございました。
作者さんによると、27章、アンプリッジに掴まるDAの
前にあるべきだったエピソードだということです(笑)
初めて意識する二人を楽しんで頂けたなら幸いです

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